エンジニアをプロダクトマネージャーたらしめたものは何か?

みなさま、お疲れ様です!企画開発エンジニア の高瀬 (@Guvalif) です。

"企画開発エンジニア" という職種はあまり耳馴染みがないかもしれませんが、一般的には TechPM:Technical Product Manager として知られるような役割となります。ところで、プロダクトマネージャーってどうやったらなれるのか (なりたいと思えるのか)、どんな人に向くのかって、あまり分からなくないですか?

本記事では、エンジニア・バックグラウンドからプロダクトマネージャーに 未経験転職 をした自身の事例を紐解きながら、再現性のありそうなファクターを探っていきたいと思います 🔍

◆ この記事の位置付け

  • 前半は ...
    • プロダクトマネジメント職種への、モチベーションに関する考察
  • 後半は ...
    • あまり表に出ないように思える、プロダクトマネージャーへの未経験転職事例 (N=1)
    • 教育事業本部における、プロダクトマネジメント環境 (の一部) を紹介するもの

モチベーションの源泉はなんだろう?

ひと昔前に比べると、プロダクトマネージャー (もしくはそれに類する職種) の求人は、だいぶ世の中に増えたのではないでしょうか。要因のひとつとして、リアル / バーチャルを問わず、プロダクトが長期的に使われるようになったことが挙げられるでしょう。特に SaaS の提供においては、この傾向が顕著なように思います。

そのような需要を受けてか、『プロダクトマネージャーになりたい人のための本*1なども出版されており、キャリアへの門戸の広がりを感じます。さて、この書籍の冒頭には "プロダクトマネージャーは自身の仕事にとことん魅了されている" という一文が出てきます。しかし、「本当に?」*2という疑問もあったりしないでしょうか?

このことに関して:

  • 前職以前にて、プロダクト組織における開発人事として、プロダクトマネージャーの志望動機や退職動機を見てきた経験
  • 株式会社ドワンゴにて、TechPM として、実際に業務に触れてみた経験

これら 2 つの経験を通じて、腑に落ちたことがあります。なぜ魅了されるのか?どんなファクターと関係がありそうなのか?次の図解を通じて考えていきたいと思います 💡

3 つのモチベーション・ファクター

モチベーションを支える 3 つのファクター

(1) "事業共感"

このファクターでは、会社が行うビジネス活動やその理念に対して、どれだけ納得感を持ち、自身も支持したいと思えているか?を考えています。

プロダクトマネージャー ≒ Mini CEO とも称されるわけで、そもそも大前提として、事業共感がなければ志望されることも無いと考えて良いでしょう。実際、プロダクトマネージャーの採用活動に際して、このファクターをいかに上手く訴求できるか?が、内定承諾の判断を分けることが多かったです。

(2) "ステークホルダー共感"

このファクターでは、ユーザーおよびプロダクトを一緒に作り上げる人たちに対して、どれだけ関心を持つことができているか?を考えています。

特にフロントエンド・エンジニアの方や、マーケティング部門およびカスタマーサクセス部門の方で、社内異動のキッカケとしてこのファクターを挙げられる方が多かったです。共通点としては "ユーザー接点の多さ" を通じて、課題解決への意欲が高くなるのだと考えています。

(3) "アウトカム実感"

このファクターでは、プロダクトの企画・開発や保守・運用などを通じて、どれだけ価値を届けられているか?を考えています。

非常に生々しい話ですが、特に退職動機において、アウトカム実感に言及されることが多かったように思います ... 。どんなに良い事業戦略があり、どんなに良いチームメンバーがいたとしても、このファクターが無ければ思い悩んでしまう場面を見てきました 😢

"プロダクトマネジメント・トライアングル" の双対として捉える

ここまでは、プロダクトマネージャーのモチベーションの源泉を、"事業共感" / "ステークホルダー共感" / "アウトカム実感" という 3 つのファクターで述べてみました。

これらは経験則から導き出していますが、よく言われる "プロダクトマネジメント・トライアングル"*3 と照らし合わせても、そこまで変ではないと考えています。

なぜなら、3 つのファクターを入り口に、各領域への興味・関心・スキル習得が促進されることは、身に覚えのある方も多いのではないでしょうか?

  • "事業共感" → "The Business" 領域
  • "ステークホルダー共感" → "Users" 領域
  • "アウトカム実感" → "Developers" 領域

プロダクトマネジメント・トライアングル が、職種への 従事後の視点 だとするならば、先ほどまで考えていた 3 つのファクター は、職種への 従事前の視点 として捉えることができるはずです。

プロダクトマネジメント・トライアングルとの双対対応

教育事業本部において、3 つのファクターはどのように見えたか?

ここからは、"事業共感" / "ステークホルダー共感" / "アウトカム実感" という 3 つのファクターについて、転職活動に際しての N=1 の観点を紹介します 👀

(1) 教育は "誰もが経験すること" であり、事業に想いを投影しやすい

義務教育に対してでも、生涯学習に対してでも、なんらか「こうあれたら良いのでは?」と考えたことがあれば、"事業共感" を満たすことは容易ではないでしょうか。

自身の場合で言えば、個々人の得意な学びや興味を持つ活動にじっくりと取り組める環境を、スケールしながら永きにわたって提供し続けることに社会的な意義を見出していて、それが事業の目指す方向性とも完全に一致していました。

(2) "熱意を共有できるドメインエキスパート" の存在

自身と同じくらい (もしくはそれ以上) の熱意を持つドメインエキスパートと一緒に仕事に取り組めると、課題分析の解像度であったり、解決に向けての取り組みであったりに、大きなバフがかかると考えています。

彼ら / 彼女らの、生徒 (≒ ユーザー) への関心の高さや寄り添い方を 外部メディア露出 などを通じて事前に知り、"ステークホルダー共感" を少しづつ高めていきました。

(3) SaaS だけではなく、学校という "Platform をグロースすること" に挑戦できる

現代において、伸びるプロダクトの多くは SaaS の形態であり、事業のグロースとソフトウェア・エンジニアリングを通じた価値提供は、密接に連携しています。

でも、我々は "学校そのものがプロダクト" であり、Feature と Ops の両面から価値提供に取り組むことが可能です。これにより、"アウトカム実感" を得られる場面は多岐に渡りますし、SaaS を超えて EPaaS:Education Process as a Service*4 に挑戦しうることも魅力でした。


少し長くなりましたが、たとえ未経験であっても、3 つのファクターを見出せるプロダクトに出会えたならば、プロダクトマネージャーに挑戦する価値がある と考えています 💪

そうは言っても気になる「エンジニアリングに集中したい」問題

"3 つのファクターが揃えば、プロダクトマネージャーに挑戦する価値がある" とは述べたものの、特にエンジニア・バックグラウンドの場合、モクモク と手を動かす時間が恋しくなりそう ... という心配もありますよね 🤔 (?

結論から言えば、教育事業本部の TechPM 職種の場合、それは杞憂 でした ✌️

理由としては:

  • PSF:Problem Solution Fit の役割が大きく、実際に手を動かしながらプロトタイピングをする場面が多い こと
  • 教育法令を適切に加味したり、教職員や生徒を N:N で捉えたりなど、背景にあるドメインモデルがそれなりに複雑 であること
  • 組織内の事業共感密度がかなり高く保たれており、ステークホルダー調整においてもネガティブな会話になりづらい こと

... といった感じで、エンジニア職種として見ても、十分にやりがいを満たせるかと思います。また、ユーザー体験設計や PJ のディレクションに関しても、チームとして相互に連携しながら進める体制が敷かれており、スキルの滲み出しも行いやすいと感じています。

企画開発の体制およびプロセス

(オマケ) 知的好奇心はどのくらい満たせるか?

プロダクトマネージャーとして成長したいなら、Learning Monster であれ,というソフトスキルへの言及があります。もし業務時間内でもそうあれるなら、プロダクトマネージャーとして (もっと言えばエンジニアとしても) 幸せなことだと考えています。

TechPM が所属する "フロンティア企画開発セクション" には、「教育的に価値ある仕組みを社会に 提案 していく」というミッションがあります。そのため、教育工学 / 教育心理学 / 教育社会学 / 機械学習 / データエンジニアリングなどなど、未来の教育の「当たり前」につながるような最新事例を、チームでもキャッチアップし続けています。

事例を応用するにあたって、数理統計手法や LLM:Large Language Model を適切に扱わなければならない場面も多く、現代的に関心の高いトピックにも、自然に触れ合える環境だとも感じています:

"学習サイクル" における検討トピック

こうした学習サイクルを加速するために、今後もさまざまな技術検討を進めていきたいと考えています 🔄

まとめ

本記事では、プロダクトマネージャーのモチベーションの源泉が "事業共感" / "ステークホルダー共感" / "アウトカム実感" にあるという考察をした上で、自身でもそれらが感じられるプロダクトを見つけ、挑戦に至る道筋を見てきました。

N=1 の事例としてぜひ参考になるとありがたいですし、エンジニア・バックグラウンドの方にも自信を持ってオススメできる環境だと感じています。

ぜひ、あなたも一緒に TechPM に挑戦してみませんか?🚀

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www.nnn.ed.nico

開発チームの取り組み、教育事業の今後については、他の記事や採用資料をご覧ください。

speakerdeck.com

*1:PM 界隈だと有名な "クライス & カンパニー" のコンサルタント陣が、執筆に参加していたりします ✍️

*2:私自身、TechPM に転職することを報告した際に「なんでそんな大変そうなことするんですか?🤔」と、対面で言われたことがあります 😇

*3:https://productlogic.org/2014/06/22/the-product-management-triangle/

*4:BPaaS から類推した造語です