こんにちは。ZEN Study iOSチームです。
今回は、多くのiOSアプリ開発者が定期的に向き合うことになる「iOSのサポートバージョン選定」について、私たちがどのように考え、意思決定しているのか、そのプロセスを実際の分析データと共にご紹介します。
開発効率とユーザー体験のバランスをどう取るか、悩んでいる方の参考になれば幸いです。
iOSDC 2025 のチャレンジトークンもありますので、ぜひ最後までお読みください!
なぜサポートバージョンの見直しが必要なのか?
すでにご存じの方が多いと思いますが、前提知識のすり合わせをしておきます。 Appleは毎年新しいiOSをリリースし、新機能の搭載やセキュリティが強化されます。古いOSのサポートを終了することで、開発者には以下のようなメリットが生まれます。
- 新技術の活用: 最新のAPIやフレームワークを利用しやすくなる
- 開発効率の向上: 古いOS向けのコードやテストが不要になり、コストを削減できる
- セキュリティの向上: OS自体のセキュリティアップデートの恩恵を受けられる
しかしその一方で、サポート終了は一部のユーザーがアプリを使えなくなるデメリットがあり、特にOSをアップデートできないユーザーへの影響は慎重に考慮する必要があります。
データに基づいた意思決定プロセス
サービスの利用状況を把握し、分析データから意思決定をするところも多いのではないでしょうか。 私たちは独自の視点を取り入れ以下の4つのステップで進めています。
- ユーザーの利用状況を把握する
- OSをアップデートできないユーザーを特定する
- ユーザー数の推移を予測する
- 上記の分析結果とサービス特性を踏まえサポートバージョンを決定する
ZEN Studyのサービス特性として、ユーザーは高校生が多く彼らは3年間を通して利用することが想定されます。学生ユーザーの1年のサイクルでは4月から利用が始まり、冬休み前のレポート提出時期にピークを迎え、その後は来年度の4月まで減少します。そして、年度明けの4月に再び利用率が増加していきます。
学生の利用サイクルを考慮して以下のようにサポートバージョンを決定します。
- 在学期間を通して継続利用できることを前提としたサポートを目指す
- サポートバージョンの変更は、新年度が始まる4月を基準に行う
開発者としてはOSのバージョンアップと共にサポートバージョンを上げたい、しかしユーザーには快適に使い続けてほしい。このジレンマの中で、私たちは上記のような独自の基準で意思決定を行っています。
データ分析と推測方法
OSのサポートバージョンを決定する際には、年度の切り替わりを意識して以下のような分析をします。
上図から分析すると、毎年9月にリリースされる新OSバージョンから前OSバージョンには以下の傾向が見られます。
- 翌年4月を境に利用率が約10%まで減少
- その年の夏頃には3%以下まで低下
- その後は横ばいで推移
この傾向を活用して、次年度4月時点のユーザー数を推測し、サポートバージョンの見直しを行います。
データ推測と意思決定の実例
以下は、実際に2024年にiOS 16のサポート終了を検討した際のプロセスです。(2024年9月のiOS 18リリースに伴う検討)
前述の手法に基づき、iOS 16の利用状況を調査した結果、iOS 16ユーザーの割合が前年同時期のiOS 15ユーザーの割合を上回っていることが判明しました。
次に、ハードウェアの制約でiOS 17へアップデートできないユーザーを特定し、例年の減少傾向を当てはめて、2025年4月時点での対象ユーザー数を推測しました。その結果、影響を受けるユーザー数が例年よりも多くなることが判明しました。
在学期間を通して利用する生徒たちの学習機会を損なうリスクを考慮すると、このタイミングでのサポート終了は適切ではないと判断しました。
以上より、2025年4月のタイミングでのiOS 16サポート終了を見送る決断はしましたが、データに基づいた客観的な結果を出した上で判断しているため、納得感を持っています。
まとめ
毎年、上記のようなステップで分析しながら、サポートを終了できるOSバージョンがあるかを検討しています。
昨年は総合的に判断して見送りましたが、もちろんサポートを終了できるOSバージョンがある年もあります。
OSのサポート終了を判断する際、開発効率とユーザー体験どちらを取るか難しい場面もあるかと思います。私たちのチームでは普段からサービスの利用傾向を観測しており、「2024年は古い端末を利用しているユーザーが例年より多いかもしれない」という仮説をデータから予想していたため、その点でも納得感を持って進められました。
iOSのサポートバージョン選定は一度決めたら終わりではありません。今後も定期的にユーザーの利用状況を分析し、開発効率とユーザー体験の最適なバランスを探り続けていきます。
最後に、ユーザーの皆様へのお願いです。可能な範囲でOSを最新の状態に保っていただけると、セキュリティの向上や最新機能の利用といったメリットがありますので、ぜひご協力をお願いいたします。
この記事が、同じように悩む開発者やプロダクトマネージャーの方々の意思決定の一助となれば幸いです。
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